「いかがでしたか」で締めるのはダメライターの証なのか、調べる

その日、私はいつものようにゴロゴロしながらスマホをながめていた。

 

 

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 ※写真の人物は私ではなく、夫です。脳内補完により女性として見ていただけると助かります。

 

 

 「ん?」

 

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ヨッピーさんのとあるツイートが目に留まる。

 

 

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「いかがでしたか」…?

何か嫌な予感がする…

 

 

いや、まさか…

気を付けていたはずだ、大丈夫なはずだ…。

 

しかし言葉とは裏腹に、心臓の鼓動は早まり、スマホを握る手には汗がにじんだ。

そしてとあるページをあけると…

 

 

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 ※ヨッピーさんへのリスペクトを込めて、集中線を入れてみました

 

 

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うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!書いちゃってるー!!!

 

気のゆるみか!ゆるみなのかぁぁぁぁぁぁー!!

 

 

 

説明しよう。

 

私は駆け出しのライターなのである。

そして先ほどの写真は、私が初めて書いたWEB記事のスクリーンショットだ。

 

要するに私は、一部のライターの間では御法度とされているらしい「いかがでしたか」を、しゃあしゃあと書き、しかもあろうことかFacebookにまでシェアしていたのだ。

 

 

署名記事でもない。ありがちなまとめ記事だ。でも、私はその記事をFacebookで公開したのだ。38歳の私の遅すぎる挑戦の背中を押してくれた人たちに、今の私を見せたくて、ありがとうを伝えたくて。

 

 

あの記事は、編集者の友達もきっと読んでいる。最近できたライター仲間も読んでいる。うわぁぁぁぁぁぁぁー!!恥ずかしいー!!!

 

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 ひとしきりバタバタしたあと、私は一つの疑問にぶちあたる。

  

そもそも「いかがでしたか」は本当にだめなのか?

 

結構…見るよ。

 

うん、見かける見かける。

 

 

そこで私は、編集者の友人にLINEを入れた。

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即答!!!!

 

彼女が起きてるかどうかも微妙な時間だったのに即答!!!!!

 

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な、なんと!!

 

彼女が在籍していた女子SPAではなんと、「いかがでしたか」禁止令が出ているのだという。

 

その理由はすぐに明らかになった。

 

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ぐ、ぐうの音も出ねー!!!

 

 

まとめに入る時、ライターはどんな言葉を使っているのか調査!

そこで私は、調査してみることにした。

 

大体の記事は、タイトル、導入(サマリー)、本文、まとめ、という構成になっている。私が気にしているのは、まとめの最初の文章のことだ。

 

まずは私の初記事が掲載されている某媒体の20件。

 

■体言止めを使い、締めの雰囲気を醸す系 11件

「〇〇な雰囲気があふれる〇〇。」

「長い歴史を紡いできた〇〇。」

 

■感想系 3件

「ついつい長居をしてしまい気づけば夜でした」

「〇〇がこんなにも奥深いとは知りませんでした」

「〇〇を思う存分楽しめました」

 

■注意書き系 3件

「〇〇には危険も伴います。注意事項を守って、楽しんでくださいね」

「〇〇ができるのは〇月から〇月の間だけです」

「〇〇するには、〇〇が気になるところですが…」

 

■プロフェッショナル系 1件

「あらためて〇〇さんにとって、〇〇とはなにか聞いてみました」

 

■別提案系 1件

「〇〇をもっと楽しみたい方には〇〇もおすすめです」

 

■いかがでしたか?系 1件

仲間がいたー!!

  

結果、圧倒的に体言止めが多かった。

 

 それに対して、編集者の友人から「いかがでしたか」がめちゃくちゃ多いと聞いた某媒体。

 

■いかがでしたか?系 16件

「いかがでしたか?」 

「〇〇を紹介しましたが、いかがでしたか?」

 

■他には〇〇も系 1件

「他には〇〇というものも、あるようです」 

 

■逆説系 1件

「〇〇の悩みを紹介しましたが、〇〇という魅力もあるようです」

 

■体言止めを使い、締めの雰囲気を醸す系 1件

「〇〇を好まないのが〇〇。」

 

■タイトルを最後に繰り返す系 1件

「〇〇には〇〇する3つの理由をご紹介しました」

 

「いかがでしたか?」の圧勝。

ちなみに「いかがでしたか?」を使っているライターさんの記事を見ていくと、ずっと「いかがでしたか?」を使い続けていた。

 

そして以前その某媒体でライターをしていた方から話しを聞くことができた。

 

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-「いかがでしたか?」と書くように指示されている?

 

「指示されていることはないです。ただこの媒体は文字数の制限があるので、短くコンテンツをまとめるのに、『いかがでしたか』は便利な言葉で、結構使っていました…フォーマットがあって、導入、23段落にわけた本文、まとめと決まっているんです。数打たなきゃいけない部分もあるので、まとめの一文に気の利いた言葉を探していられないというのもありますね」

 

-数打たなきゃいけない…「オラオラオラー!書け―!!」って感じですか?

 

「いやそんなことは(笑)。契約後はトレーニングがあって、手取り足取り原稿の書き方を教えてくれたし、すごく勉強になりましたよ。2年ほど契約していました」

 

なるほど…

 

 

そして色々調べているとこんなツイートも発見。

 

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編集さんや媒体によっては「いかがでしたか」を特に問題視していない人も

いることがわかりました。

 

現役編集者に聞く「いかがでしたか」とWEB媒体の実態

ここで改めて、10年以上の編集経験があり、近年は紙媒体からWEB媒体に活動の場を移した、現役編集者さんに話しを聞くことに。

 

-『いかがでしたか?』を見かけるようになってどれくらいですか? 

「んー、定かじゃないですけど、3年前には確実に見かけてましたね」

 

-率直に『いかがでしたか?』についてはどう思いますか?

「結構書いてくる人いますよ。紙媒体ではあまり使われない表現ですし、WEB記事独特の締め方ですよね。あんまり好きじゃないですけど。」

 

ーちなみに『いかがでしたか?』以外でいらっとくる表現はありますか?

「まとめだけのコピペメディアはあまり読まないようにしてますけど、『〇〇な理由3つ』とかですかね…」

 

ーあー…なるほど(笑)。『いかがでしたか?』を見るようになった理由は、やっぱり低予算化が原因だと思いますか?

「低予算ゆえ、ライター未経験者が多いクラウドソーシングに発注し、質の低い記事が量産されるっていう事実はあります。ただ、『いかがでしたか』に関しては、禁止している媒体もありますし、絶対に書かないと決めているライターさんもいますので、予算の問題とイコールではないと思います。」

 

-あまり予算をかけられない媒体が増えてきている感じはしますか?

「WEB媒体全体の低予算化が進んでいるかどうか、というところは私はわからないのですが、紙媒体と比べると予算が少ないのは事実です。紙媒体などを経ているベテランライターさんだと依頼しづらい。上がってきたもののクオリティが低くても何度もリテイクさせるだけの予算がない。それを編集がカバーできればいいんでしょうけど、そこまで力量のあるWEB編集者もまだそんなにいない。そこが問題なのかなあと思っています。ただ WEB媒体は手の届かない豪華さよりも身近な共感の方がバズったりするので、予算をかけた記事=いい記事だとも言い切れません。WELQの問題がありましたし、以前よりクオリティは持ち直していると思います。残る媒体と残らない媒体、過渡期でしょうね」

 

-なるほど!身近な共感の方がバズる、というところ納得です。

結論『いかがでしたか』は使わないほうがいい、と思われますか?

 「そうですね。使い古した感はどうしても出ますし、あまり使わないほうがいいと個人的には思います。」

まとめ:「いかでしたか」を問題視していない人もいるようだけど、みんなが使いまわした言葉は極力使わないほうが、できるライター感でるよ!!

 

私も駆け出しのライターだ。これから気を付けていけばいいだろう。

そのように答えがでてすっきりした私は、春物が欲しいという夫を連れショッピングに出かけた。


試着を終えて出てきた夫の表情は明らかに暗かった。店員が聞く。

「いかがですか?」

鏡を眺めてなかなか答えない夫に、沈黙に耐えかねた店員が再度、口を開く。


「い、いかがでしたか?」


その瞬間、私を電気のような衝撃が貫いた。

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 そうか…

そうだったのか…

 

「いかがでしたか」は私だったのだ。

 

店員が「いかがですか」を「いかがでしたか?」という無意味な過去形に置き換えた時、私にはすべてが理解できた。

「いかがでしたか」はごまかしだ。そして、媚びだ。

この服は夫に似合っていない。そして夫自身がそう感じていることは表情から明らかだった。

他にかける言葉がなかったのだ。いくらなんでも、自分の店で提供している物を「似合ってないですね」「お客様にお似合いのものは他にあります」とは言えまい。あの夫の表情を見て「お似合いですよ」とも言えなかったのだろう。


まとめに入る文章を調査していた時に、一つの疑問があった。

「いかがでしたか」なんてまとめの言葉を入れなくても、違和感のない文章と、違和感のある文章があるということだ。

その違い。


それは、


文章の深さだ。


まとめ記事のように、表面的な事実を少しずつつまんだだけの記事は、急にまとめに入ると、「え、もう終わり!?」という印象を与える。なので「いかがでしたか」というお伺いを立てることでごまかしているのだ。

それに対してしっかりと取材を重ねて、ある対象に対してきちんと表現した文章は、読者の知りたいという欲求を満たしているので、なんの前置きもなくまとめの文章に入っても違和感がない。

 

私は泣いていた。

ライターになって2ヶ月。私は「いかがでしたか」という仮面をかぶって言い訳し、自分を表現することから逃げていた。

 

 これは、予算の少ないまとめ記事です。

私が考えたネタではありません。

そんな文章ですが楽しんでいただけましたでしょうか。

もっとお気に召すネタはありますでしょうか。

いかがですか?

いかがでしたでしょうか?

 

WELQを始めとするキュレーションメディアのコピペ問題は、企業側の問題だけが指摘されがちだ。ライターは考えられないような金額で搾取され、被害者のように思っているかもしれない。


でも、本当にそうだろうか。

目先の自分の利益を優先して、自分の足を使って調べ、自分の頭で考えたことを、時間をかけて表現していくことから逃げたのは、ライターも同じではないだろうか。

確かにそれぞれの事情があるだろう。

でも自分の本当の価値を試すことから逃げていたという点から見れば同罪だ。


そのループから抜けるためには、できることは一つだ。

勇気を出して、自分を表現しよう。

 

そんなくそつまんないこと考えてんの?
浅い考えだねー。
不謹慎です。
不快です。

 

笑われるかもしれない。でもいいのだ。それが自分なんだから。

そこからしかスタートできないのだから。

 


「いかがでしたか」へ

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私はお前のおかげで大事なことに気づけたよ。

お前は多分、お客様にお伺いを立てるという、

一歩進んだサービスとして生まれた言葉だよね。

 

今日のワインを選ぶために試飲した紳士に、

マッサージを終えた淑女に、

お客様がなんでも意見を言える、最上級のサービスなんだよね。


でもね、媚びすぎちゃいけない。

聞いちゃいけない。

私たちが提供するものは、「いかがでしたか」なんて聞かなくても

最高に面白いものじゃなきゃいけない。

 

だからさ、

自分を持ちな。

強く生きな。

ここでお別れだけど、私も自分を、生きるよ。自分を正面から、表現していくよ。

                                 上野 郁美